有限会社エスエム 代表取締役社長 土屋 勝義
私たちは、機械設計製造業で様々な産業機械を製作しています。特に強みを持っているのが、ペットボトルや、歯磨き粉のチューブ、化粧品容器などプラスチック容器の検査をする装置の製造で、オーダーメイドを得意としています。 |
お客様との強いパートナーシップで安定した経営
-事業内容と会社の現状について-
当社は、28年前に創業した機械設計製造業で、様々な産業機械の設計や製造を行っています。中でも大きなウェイトを占めるのが、ペットボトル検査機の開発と油圧シリンダーの製造です。私は2代目になるのですが、実はもともとは当社の外注先の部品加工会社を経営していました。20年近く前になりますが、当時の社長(現会長)に声をかけられ、将来会社を継ぐことを念頭にスカウトされて入社し、5年前に社長を引き継ぎました。
ペットボトルの検査機は、製造したペットボトルに穴が空いていないか、傾きが出ていないかなどを検査する装置です。お客様は大手のペットボトル製造メーカーになるのですが、この検査機をオーダーメイドで製作し納入しています。また、お客様先のペットボトル製造ラインのメンテナンスも一部請け負っています。
検査機には既製品があるのですが、同社は既製品を使わずオーダーメイドにこだわっています。数多くある検査項目を1つの検査機で網羅したいという要望や、ラインに合わせてカスタマイズしてほしいという要望など、工場ごとに細かい部分でニーズが異なるのです。「ここをもう少し改良できないか?」「こんなことはできるようにならないか?」といったとても細かい要望なのですが、それに応えられるように改良を重ねてオリジナルの検査機を仕上げるのが当社の強みです。ですので、検査機はすべてワンメイクでどれとして同じものはありません。
また、油圧シリンダーの製造に関しては、研磨機の中の1部品として規格外のものを製造、納入しています。油圧シリンダーは古くからあるアッセンブリでどこでも買える部品ではありますが、大事なのは組み上げた後に研磨機が正常に動くことです。図面通り組んでも動かないこともあり、そこに経験や勘が必要となることもあります。他社と技術的に大きな差別化があるわけではありませんが、シリンダー1本1本がすぐに壊れないように製造するとともに、組付けに絶対にミスがないように丁寧で正確な仕事をしています。これまでほとんどトラブルはなく、お客様に厚い信頼を頂いています。
いずれの事業においても業界で強いお客様とうまくパートナーシップを組むことによって、なくてはならない存在として長く安定した取引を頂いています。ただ、これは常にお客様の要望に応えられていて初めて成り立つこと。お客様の期待を裏切らないよう技術や品質を高めることが求められます。
気がついたら主力メンバーが皆40代になっていた
-人材の採用や育成について-
2つのメイン事業を軸に町工場として安定した経営をしてきましたが、昨年大きな変化がありました。それは20代の若手社員を一気に3名採用したことです。採用のきっかけは社員の高齢化に対する危機感。数年前にふと、会社の主力メンバーがすべて40歳代になっていて若手と呼べる社員がいなくなっていることに気づきました。少し前までは全員30歳代だったんですけどね(笑)
これはまずいと。当社では一人前になるのに3~5年、プロフェッショナルになるには10年かかりますので、今のうちに手を打たないと技術継承が間に合わない。全員が50代になってからでは遅いと採用活動の必要性を感じたのです。ですが、当社のような小さい会社に若い人材を採用するための良い手がなかなか思いつきませんでした。
技術の会社であるからこそ、妥協せずより好みをした採用をすべきだと考えていましたので、年配者の応募が多く選びづらいハローワークに求人は出しませんでした。かといって、求人媒体や成功報酬型のサービスも、費用をかけて採用活動してもうまくいかず無駄な出費をしたという話を聞くことが多く、二の足を踏んでいました。そんな時に取引先の銀行から千葉県密着の人材サービスの話をいただいたのです。そこで、思い切って採用活動を行ったところ、昨年から今年にかけ3名の20代の採用ができました。その中の2名は完全な未経験ですが、今のところ、順調に育っています。
実際に採用を行ったことで、社内の意識やコミュニケーションの取り方が大きく変わりました。弊社のような町工場の社員は業務範囲が広く、覚えることが多くて大変です。機械の部品は作らないといけませんし、機械の組付けもするし、メンテナンスや打ち合わせのために出張することもあります。部品製造も機械の組付けも、それぞれに専門会社があるくらい独立した分野ですが、それを全部やらないといけません。
大手メーカーであればライン作業で現場が動きますので、工作機械を作るといっても、全てを一人でやるわけではありません。前工程の担当がいて、後工程の担当がいて、製造担当者は機械のオペレーターをするだけということもあります。ですが、当社では、お客様から図面をもらったらそれを完成させるまですべて自分でやりきります。そこに我々の仕事のやりがいがあるわけですが。
時代に逆らわず怒らない指導を徹底した
そんな環境ですから、まず、新入社員には初めから仕事を覚えるのに人の3倍の時間がかかってもよいと伝えました。そして、彼らに粘り強く技術を学んでもらうために既存社員の意識を統一しました。初歩的な話ですが、まずは、指導の際に怒らないことを徹底しました。私たちの時代は、さすがに殴られはしませんでしたが、口の悪い先輩に怒鳴られながら学んだものです。それが製造現場の当たり前の光景でしたが、今の時代はそれは全く通用しません。だから怒らないと決めたのです。
自分たちは経験したことがないのですが(笑)、「自主性を重視し、一人一人が今何をすべきかを考えて行動できる人間に育ってほしい」という教育方針の元、褒めながら教えるということにチャレンジしたのです。
そして、何でも聞けるという環境づくりを徹底しました。教えたことを1週間後にやろうとしてもわからなくなることはよくある話です。技術の分野では聞きづらいという雰囲気があるものですが、我々は怒りません。何度でも丁寧に教えます。だから、「わからなかったらそばにいる社員にすぐに聞きなさい!」と。ベテランの社員も含めて全員に言い含めてあるので、安心して聞ける雰囲気が醸成されましたね。
また、労働時間を短縮するという意識も強くなりました。お客様の要望に応えるためには、試行錯誤を繰り返して技術的に進化をすることが問われます。何度も何度も繰り返し試行錯誤し、時には遅くまで残業したり、場合によっては徹夜して技術改良を続けるということもありました。でも、今は、時代的にも社員の年齢的にもそんな働き方は通用しません。その中でできることとして、社内の連携、コミュニケーションを今まで以上に強化しました。例えば、納期がギリギリと言う仕事があった場合、これまでは、その業務の担当者がすべての責任を負ってやりきっていたのですが、一点集中して皆で協力し早く仕事を終らせるという考え方に変えたのです。
コミュニケーションにおいては、「言わなくてもわかるだろう!」という雰囲気をやめようと決めました。わかっていることでもあえて伝える、確認を取るということを徹底したことで生産性が改善され、仕事が早く終わるようになりました。
結果、採用をきっかけに社内の雰囲気が以前にも増してよくなりました。上の人間が自分の直接関わっている仕事以外の進捗などに気を配るようになりましたし、コミュニケーションも増えました。また、人が増えるとこんなに楽になるのかと思うこともあります。新人に現場の掃除を負担してもらうだけでも作業効率が大幅に改善し、皆の負担が減っています。
小さな会社だからこそ終身雇用を守れる会社を目指す
-今後について-
当社が昔から力を入れているのが社員が長く安心して働けるための福利厚生です。例えば、生命保険を使った保障付きの退職金積立や、医療保険、傷害保険、定年後に65歳まで本給保障で継続雇用できる制度など。社員は15人かもしれませんが、その家族を含めると60人の生活を守っていくのが経営者の使命というのが会長の時代からずっと言い続けていることです。正直、20代の人達にどこまで響いているかわかりませんが、入社を決める際にそんな当社の姿勢は評価してもらえたように思います。これからも終身雇用を守れる会社にしたいですね。
少人数で最大効率を生み出すという考え方を持っていますので、人数を大きく増やすつもりはありません。実際問題、設計製作という仕事はむやみに人が増えると手が空いてしまう人が出て生産性が落ちてしまうのです。とはいえ、採用活動をしたことで採用したいと思うポストも増えましたから、20人程度の規模が理想ではないかと感じています。
新しい人材が入社して、社内の連携が強まりましたが、まだまだ改善できると感じています。今の事業構造でできるところまで効率を高めた上で、新たなチャレンジができるようになった段階で次のステージを考えたいと思います。
聞き手:株式会社千葉キャリ 種村(写真左)
社名 | 有限会社エスエム |
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事業内容 | 工作機械器具・一般機械器具製造 |
代表者 | 代表取締役社長 土屋 勝義 |
創業・設立 | 1991年 |
住所 | 千葉県船橋市栄町2-4-14 |
採用状況 | 中途採用 |
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