生産性向上のために週休3日制にチャレンジ

株式会社 カワイチ・テック 代表取締役 川口 秀一
ゴムやプラスチックの練り加工を得意とするメーカーです。長年培われてきた研究開発、配合設計、精練技術、配合技術を駆使し、お客様のニーズに合った最適な素材を提供しています。特にゴムのペレット化の技術を持つ会社は全国でも少なく、共同研究や新規開発に関する相談が増えています。

仕事の依頼を断らないことで技術力がUP

-事業内容と会社の現状について-
当社はゴムやプラスチックの練り加工を行うメーカーです。ゴムやプラスチックをペレットと呼ばれる2~3 mm 程度の粒子状の塊に加工する役割で、当社が加工した製品はペットボトルのキャップやポリフィルム、上履きのソールなどの素材として使われています。
実は出荷した製品の8割は最終的に何に使われているのかがわかりません。お客様からクレームがあって初めて最終形を知るなんてことも。お客様に「御社からの納期が遅れると◎◎の製造が遅れるから困る」と言われ、とても有名なドリンク剤の蓋の裏部分に使われていたことを知ったなんてこともありました。
実はこのペレット化ですが、プラスチックをペレットにする技術を持っている会社は多くありますが、ゴムをペレットにする技術を持っている会社は数社しかありません。柔らかいゴムを細かく切ったり、ゴム用の金型に合わせて成形するのがとても難しい特殊な技術なのです。ゴムのペレットは屋上防水やEVの部品などでも使われるなど、今後もかなり需要が伸びると思います。

-成長要因について-
順調に受注が伸びていますが、その理由の一つは、「仕事の依頼を断らない」ことだと思います。例えば、今は、ゴムとプラスチックを混ぜた製品の受注が増えており、当社の武器の一つとなっているのですが、当初はこの混ぜるということに新たに取り組む会社がありませんでした。ゴムメーカーもプラスチックメーカーも、2つの素材を混ぜることで製品がきちんと仕上がるかどうかわからないので、面倒で断ってしまうのです。
でも、当社はとりあえず受けてみる。とりあえず混ぜてみようと。結果、色々と試行錯誤することでお客様のニーズに合った製品が完成したというわけです。この試行錯誤の繰り返しで技術力が上がり、受注の幅が広がるのです。ですので、当社が新たに取り組んだ結果、他社がマネてくるということもよくあります。ただ、ゴムのペレット化だけは技術的になかなか真似ができないようですね。
そんなことから今も新しい受注は私が受けるようにしています。社員が受けると断ってしまいますから。「それは無理じゃない?」と思えることでもとりあえず受けてしまうので、今も25種類ほどのプロジェクトが動いており、てんやわんやですが(笑)

そんな当社もずっと順調だったわけではありません。もともと当社は、創業63年目の老舗のゴム加工メーカー。特許を取らなかったのでビジネスとしては大きくなりませんでしたが、哺乳瓶などに使うゴムの乳首を初めて作った技術力のある会社です。しかし、時代の流れによって、ゴム加工の需要がどんどん減り会社が縮小。そこで、新たな素材としてプラスチックを扱うことにチャレンジしたのです。簡単なようですが、この2つの素材は製造工程が全く違い、現場に求められる技術も全く異なります。大きな変化に不安を持つ社内の雰囲気を押し切り、プラスチック加工メーカーへの変革に舵を切ったことで今があります。ゴムの加工はどんどん縮小しましたが、そこで培った技術力は当社の大きな武器として残りました。


-人材の採用について-
当社では採用に関しては、昔から未経験者を採用し、社内で育てるという体制をとっています。プラスチックを新たに扱うようになった頃は、社内に全く技術がなく、経験のない人間が集まり試行錯誤しながら学ぶという状態でした。ですから、未経験者を育てることに全く抵抗感がないのです。
また、工場は、夏は熱くて冬は寒いし、24時間稼働の交代制なので過酷な環境です。しかも、他の会社がやりたくないニッチが仕事を強みにしていますので、応募してきてくれることが有り難い。ですから、極端に言うと、よほど変な人でなければ全部採るといった勢いで、元気で挨拶ができればOKという感じですね。
ですが、面白いことに一旦入社するとほとんど辞めません。また、どんな状態でも会社側から辞めさせるということはしないので、辞めるのは家庭の事情などよっぽどのことがあった場合だけですね。
また、「来るもの拒まず、去るもの追わず」の考え方ですから、過去の笑い話ですが、「社長、会社辞めたいです」「どうぞどうぞ」「え?」といって、辞意を撤回するということもありました(笑)

技術者は「一人前」と「一流」の2つの種類に分ける

-社員教育について-
未経験の人を教えるのが当たり前の環境ではありますが、教える人も未経験ということで大変です。その中で1つだけ徹底しているのが「なぜできないのか?」を掘り下げていくこと。「なぜ?」を突き詰めることで必ず本当の原因に突き当たるので、その原因を解決する。時間はかかりますが、それにより着実にレベルアップします。
また、技術者を育てる中で、2つの種類がいることがわかりました、私は、「一人前」と「一流」と呼んでいます。「一人前」は1,2ヶ月ですぐにできるようになる人、「一流」は、3年やってもできない人です。それぞれに合わせたポジションの与え方がとても重要です。
1,2ヶ月でできる人は、「一人前」として新しい仕事をどんどんやらせます。彼らは一つのことだけやっていると飽きてしまいますから。一方で、3年やってもできない人は、同じポジションで20年やらせて、圧倒的な技術習得をさせます。それにより「一流」になるのです。

また、技術力の差は生産性に現れますので、生産性を高めることを意識させています。例えば、製品を切り替える時のスピードや機械のメンテナンスなどに差が出ます。本当に技術力の高い人は、機械の音を聞いたり部品の減り具合を見て、早めにメンテナンスし、稼働が止まらないような予防ができる。技術力の低い人はそういったことに全く気づかないので、機械が壊れてしまう。この違いに気づかせることが社員教育においてはとても大事だと思います。


-働き方について-
当社では今、3ヶ月トライアルで週休3日制を導入しています。「働き方改革」ということでニュース性が高く、メディアから多くの取材を受けています。週休3日制を導入したのは、あるTV番組で週休3日制にしたら生産性が上がったというニュースを見て、実践してみようと思ったからです。
とはいえ、いきなり週休3日制にできるわけではありませんので、私なりに手順を踏みました。
まずは社内にこっそりリークをして、「週休3日制を検討しているみたいだよ」という噂話を流しました。その後しばらくしてから幹部を集めて「週休3日をしたいのだけどどうしたらよいか?」とみんなで方法を考えました。不安を抱く社員もいましたが、今年の会社の経営方針は「挑戦」ということもあり、皆で前向きに方法を考えてくれた結果、方向性が定まり、全体会議で全社に発表したというわけです。だから、そんなに大きな反発はありませんでした。多くの社員が集中して仕事を終わらせて休みを多く取りたかったんですね。
何社かのお客様からは「納期が遅れているのにどういうことだ」と苦情もいただきましたが、それはそれで緊急対応するから許してくださいということで何とか取り持ちました。週休3日制に対する反応は上々ですので、トライアルの結果をしっかり振り返った上で、今後の方向性を決めたいと考えています。

ポジティブな社風醸成のために「ため息禁止!」

-社風について-
「楽しくやろうぜ」、「明るくやろうぜ」というのが当社の基本スタンスです。「人生が面白いくらいうまくいってしまう法則」という標語を会社に張っているくらいで何でもポジティブに考えようということを働きかけています。
また、私が気を使っているのが、自分から若い世代の価値観に歩み寄っていくことです。社員の世代が変わり自分のころの常識は通用しません。若者の気持ちを理解するために、この歳でポケモンGOもやりました(笑)。「なるほど、これははまるな」ということが分かりましたし、その上で「はまらないようにするにはどうしたらいいか」などと対策を考えることもできます。そうやって、社員の世代の価値観をつかむように心がけています。
もちろん、歩み寄ると言っても厳しさも必要です。人の話を聞く時に帽子をかぶったままの時などは注意する、といった最低限のモラルとエチケットだけは伝えています。

その他、明るい組織風土を作るための仕掛けとしては「ため息禁止」という制度があります。ため息は運気を悪くしますから。私も気を抜いていると社員から「社長、今のため息ですか?」と言われ、「違う違う」と言って慌てて否定することもありますが(笑)
また、年始の経営方針発表会で、毎年、全社員に発表させていることも風土づくりに影響しているかもしれません。発表のテーマは、「個人の夢」や「1億円もらったらどう使うか?」、「自分の一番好きな写真を1枚披露する」といった内容で、毎年工夫しています。社員同士、お互いの考え方がわかりますし、距離感が近くなりますよね。あるフィリピン出身の社員が、「1億円もらったら、一旦帰国してまた会社に戻ってくる」と言ってくれて、じ~んとしたこともありました。

-今後について-
数年前に工場の移転により社員が大幅に入れ替わったこともあり、今の社員の平均年齢は36歳です。同業他社に比べてかなり年齢的にアドバンテージがあります。どんどん社内の技術力が上がっているので、業界トップレベルにしっかりと高めたいと思います。
その上で、10年後のワクワクする仕事を作るために、海外展開も意識していますし、全く違った技術開発にもチャレンジしています。すでに別会社を作って様々な研究開発をしていますので、社員もワクワク感を感じているのではないでしょうか。

聞き手:千葉キャリ 種村(写真左)

社名 株式会社 カワイチ・テック
事業内容 ゴム加工及びゴム加工製品の製造販売
プラスチック加工及びプラスチック加工製品の製造販売
倉庫賃貸業
不動産賃貸業
代表者 代表取締役 川口 秀一
創業・設立 昭和29年4月(設立昭和32年4月)
住所 千葉県成田市南羽鳥570-46
URL http://www.kawaichi.co.jp/
採用状況 新卒採用