社内でのグループ討論が会社の変革につながった

株式会社サンプラン 代表取締役 神崎 利昭
当社は八千代市に本社を置く、土木工事の設計・施工を行う会社です。主な仕事は電線共同溝工事の設計(無電柱化)で、創業時からこの分野では最前線を走っています。

ニッチな分野で強みを活かし、安定経営

-事業内容と会社の現状について-

当社は、電線共同溝工事という電線を地中に埋め込む工事、いわゆる無電柱化に関する設計を主に行っています。基本的には公共工事となり、大手の土木コンサルティング会社が国交省や東京都などから土木設計の仕事を受注し、その下請けとして仕事を行います。土木コンサルティング会社の中でも自社で電線共同溝の設計ができる会社は少ないため、下請けを利用することが多く、また、電線共同溝の設計を請け負える会社自体がほんの数社なので、その中の一社である弊社には自然と仕事が舞い込むという構図になっています。

なぜ、当社が電線共同溝工事の設計に強みをもっているかというと家業だからでしょうか(笑)。実は私の父が東京電力で地中線部門の長をしていました。一方、私は電柱製作メーカーに勤務し、電柱のなくなる時代の到来に向けて、新製品開発の部署で無電柱化に関わる製品の開発や製造をしていました。お付き合いのあった土木コンサルティング会社の勧めにより独立することになったのですが、独立当初から電線共同溝工事に関する多くの専門知識を持ったスペシャリストだったというわけなのです。電線共同溝の推進に向けて、初期段階のマニュアルを作ったり、協議の仕組みを作ったりと、この分野の最前線で仕事を手がけてきたという自負を持っています。
ちなみに、非常にニッチなこの分野は、中途半端に関わっても利益が出ないため、新規参入が殆どありません。そのため、強みのある当社は安定した受注を図れているのです。

技術よりも責任感や気配りが重要

-社員教育や組織づくりについて-
設計の仕事なので、図面と向き合っていることがほとんどだと思われがちなのですが、我々の重要な役割の一つが、無電柱化に関わる複数の業者様との打合せの進行管理です。設計協議と言われるのですが、図面をもとに、景観や防災などの様々な部分への影響を考慮した上で、構造や施工方法について協議するのです。その際に、いかにわかりやすい資料を少ない枚数で作るのか、いかにうまく司会進行するのかがとても重要なポイントとなります。ですので、この資料準備がかなり大変です。
設計協議は1つのプロジェクトで4回ほど行いますので、プロジェクトを完了させるためには、最終納期と合わせて、5回の納期管理が必要となります。この納期をしっかり管理し、協議を円滑に仕切って、滞りなく工事を完了させるのが我々の仕事の難しさかもしれません。
私自身は20数個のプロジェクトを同時進行していますから、常に100回以上の細かい納期に追われていて、今でも目が回りそうです(笑)。

社員には、設計に加えて、この協議のための準備や段取りを任せていくわけですが、一人前の仕事をこなすようになるまでにかかる時間は本当に人次第です。1年で任せられることもあれば、10年かかっても厳しいこともあります。
その差をうまく表現するのは難しいのですが、間違いなく技術力ではありません。どちらかというと責任感や仕事への向き合い方といった部分だと思います。絶対に納期を守るという責任感と限られた時間の中で、よりわかりやすい資料を作るという気配りやこだわりが重要ですから。
図面の見方や設計の仕方は教えられますが、責任感や仕事への向き合い方といった意識の差はなかなか教えられないもので、社員育成には苦労してきました。試行錯誤しながら、今では、環境を整備して、本人が育つ部分に任せるしかないという境地にたどりつき、責任感や意識を自ら高めてもらう仕組みづくりに力を入れています。

社員が育たないのは経営者の問題

そのための1つの取組みとして、2年前に人事評価制度を一新しました。人事評価の指標を、成果目標の管理と会社の求めるコンピテンシーに基づく行動目標の管理の2軸にしました。行動目標の管理というのはいわゆるプロセス管理です。例えば、会社が求めるコンピテンシーに「責任感」というものがあるとすると、その「責任感」に基づいて成果につながる行動目標を社員自らが設定します。そして、その行動をやりきったかどうかを評価するのです。このプロセス評価により、社員の仕事に対する考え方や向き合い方が変わってきたことを実感しています。

人事評価制度を一新したことで私自身も大きな気づきを得ました。それは私自身も仕事への向き合い方、価値観を変えないといけないということです。例えば、我々の世代は仕事に対する知識は時間外に自分で学ぶものでした。設計には必ず基準書というものがあるのですが、基準書は時間外に読むのが当たり前でした。しかし、今の人たちは時間内にしか読みません。また、読めと言わないと読みませんし、更に言うと読む時間を与えないと読みません。
少し前までは、自分のスキルアップにも繋がることなのになんでやらないのだろう?と社員の問題として捉えていたのですが、今ではこれが仕事に関する価値観の変化で私自身の問題なのだと理解しています。時代の変化に合わせて経営も変化しないといけません。価値観を変え、仕事の与え方を変え、伝え方を変えることで対応していこうと考えています。

その他、組織づくりということでは、当社を大きく変えたのが社内でのグループ討論です。10年ほど前、一時、当社はとても厳しい状況にありました。仕事量に合わせて人を増やし組織を大きくしたのですが、人の育て方もわからず人が定着しない、政権が変わり受注が減る、私は現場に出ていてマネジメントができない、、、という状況で社内の雰囲気も非常に悪かったのです。そんな時に、あるきっかけで経営者同士が勉強する組織に所属し、グループ討論の重要性を教わりました。そこで、会社を立て直すために社内にグループ討論を取り入れたのです。

たしか、1回目の議題は、過去に辞めていった人の辞めた理由を考えるというものだったと思います。当時の社内の暗い雰囲気を象徴していますね(笑)。最初の頃は私の出す議題に対する関心は高くなかったし、社員も主体的な姿勢ではなかったため、私一人が長々と話しているだけということもありました。それでも粘り強く続けて、10回目くらいでようやく社員から主体的な話が出るようになったのです。
それからは、このグループ討論が社内をものすごく活性化させています。今は、業務提案を兼ねているので業務に関する提案をしたい人が主体的に司会進行をしていますし、どんどん新しいアイディアや企画も生まれています。

終わりじまいで残業時間はほぼゼロに

-働き方について-
グループ討論で会社が変革したという事例を1つお話しすると、残業時間が大幅に減りました。先ほどもお話しましたが、弊社の仕事は数多くの納期を抱えますから、納期前などはものすごく残業が多いのが当たり前でした。年度末などは、その日に帰れることはないくらいです。
ある時、「どうやったら生産性を上げ、早く帰れるか」がグループ討論の議題に上がりました。一度で結論が出るはずもなく、何度も議論を重ねたのですが、最終的に「仕事量を決めて、終わったら帰るということにしよう」という話になったのです。いわゆる「終わりじまい」ということです。1週間の仕事量を決め、分担を決めて、早く終わったら人のを手伝う、そして絶対に皆で一緒に帰ろうということを全員で決めたのです。

そうすると、本当に驚くことにそれ以降、帰社時間が17時を越えることはほとんどなくなりました。今の弊社は残業とは無縁の世界です。働き方改革とか言われるよりずっと前にそんな環境ができていることは誇りですね。
一説によると夕方に仕事などにとらわれず自分を自由にできる時間を持っている人ほど自信が高まり、ツキを感じるそうですが、社員の顔色も変わりました。この流れを断ち切らないように、人事評価制度にも生産性を高める仕組みとして組み込んでいます。
当社の人事評価制度の成果目標には、達成率と帰社時間が掲げられていて、単純に言うと達成率100%以上で17時前に帰ると給与がものすごい上がるようにしています。今のところ、2半期連続で達成率は110%を越え、17時前に帰ることを実現しているので、残業のないまま給与も上がっているのです。

幹部間での会話も変わりました。「今日は残業したねー」と言って時計を見たら「まだ、18時半だ」みたいな感じです。昔は朝の4時、5時までは仕事していたので、本当に会社が変わったと思います。これに関しては、いろんな会社から「すごいですね、でもうちでは無理だなあと」と言われます。ですが、私はそんなことはないと思います。初めから無理と思っていたらだめ、本当に意識改革というのが大事だと思います。

-今後について-
無電柱化をもっと広げたいと言うのはもちろんですが、材料を開発(付加価値をつけて)して、材料を販売するということにもチャレンジしたいと思います。私が前職でやっていた分野ですし、工事の資格も持っていますので、自分たちで設計し、自分たちで材料を作って、自分たちで工事をする会社に育てたいですね。
そのためには、一番必要なのはやはり人です。働きやすい環境を整えつつ、人の育つ会社に育てていきたいと思います。

社名 株式会社サンプラン
事業内容 土木工事の設計並びに施工
電線共同構・情報BOX・無電柱化事業
代表者 代表取締役 神崎 利昭
創業・設立 1995年6月23日
住所 千葉県八千代市大和田新田1153-25 秋山ビル301号
URL https://www.yachiyo-sunplan.co.jp/
採用状況 中途採用

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