人時生産性の導入で給与も生産性もアップ

株式会社 新栄 代表取締役 林 卓也
当社は抜打ち加工・プレス加工と言われる、加圧することで任意形状を打ち抜く加工法のプロフェッショナル集団。金属以外のゴムやプラスチックの素材を扱い、OA機器・車両・インテリア・工業向け部品の製造を行っています。特に電話、テレビ、ラジオ、コンピュータといった「弱電」と言われる分野に強みを持っています。

緊急対応のスピードは全国トップレベル

-事業内容と会社の現状について-
当社は、電機メーカーや自動車メーカーなどで製品を作る際に必要となる細かい部品を主にプレス加工で製造する加工メーカーです。プラスチックやゴムなど金属以外の素材を扱っていて、抜き打ち加工やプレス加工の他、複数の部品を組み立てて1つのパーツにするアッセンブリという業務も行っています。有線電話・無線通信・テレビ・ラジオ・ステレオ・コンピュータといった「弱電」と言われる分野に強みを持っていて、中でも企業向けパソコンの製造に多く関わっています。

細かい部品の製造が多く、1つ1つの部品単価は10円程度、中には1円を割る部品もあります。典型的な下請け産業ではありますが、企業向けパソコンは個人向けパソコンと違い、出荷台数は横ばいで堅調な他、様々な業界との取引が広がっています。また、とてもニッチな分野で強みを持っているので、新たな会社が設備投資をして参入してくるということはありません。その中でシェアを確実に伸ばしていますから、ここ数年、売上利益ともに10%~20%くらいの成長率を維持しています。

当社がシェアを伸ばしている最大の要因はメーカーからの短納期でイレギュラーな依頼に応えられる対応力を持っていること。メーカーからの部品の発注依頼は大きく2種類のパターンに分かれます。
1つは製品の開発に合わせて大量の部品を一気に納入するケース。これは比較的納期に余裕がある一方、単価勝負となるため利益率は低くなります。
もう1つは、対策部品と言って製造工程で追加で必要となる部品を新たに製造するケース。ものづくりの工程では設計通りにいかないことはよくあります。例えばパソコンを組み立てていたら一部設計とずれて細かい部品で補わなければならないといった場合です。こちらは、コストよりも納期が勝負となります。当社はこの対策部品の製造を得意としています。

夕方に設計図が届き、翌日の朝一に発送しないといけないということはよくありますし、15時に緊急の依頼が来て、当日の羽田の最終エアー便に間に合わせてほしいという無茶な依頼もあります。この短納期での製造に関して、国内でトップレベルの対応力を持っていて、「最後は新栄に任せればなんとかなる」という安心感をいただいているのが当社が成長している要因ですね。

ものづくりの現場がわかる営業を育てていることが強み

-社員教育について-
お客様からの緊急の要望に素早く対応するために一番重要なのは、とても基本的なことですが、チーム全員が納期を共有し、その納期に間に合わせるために一丸となることです。この意識の共有ができていないといくら高い技術力があっても対応力は上がりません。ですから、新入社員研修では、「我々の仕事の基本はお客様の時間軸で納期を考える」ということを一番初めに教えています。無茶な納期で依頼が来た際に「無理」という答えを出さないのが当社の競争力。「どうやってお客様の納期に間に合わせるか」を徹底的に追求する社風をとても大切にしています。

また、テクニカルな部分では、いかに短い時間で、最短で製造するための工程を組み立てるかが重要となります。「今回の依頼はスピード重視なので量産用の工程から変更し、こういう工程で進めてはどうだろうか」といった瞬時の設計力をお客様の窓口となる営業担当者が持っていることがカギとなるのです。ですから、当社では営業担当者には全員、最低1年間の工場実習を受けてもらい、製造工程を完全に理解するレベルに育て上げています。

新卒採用への切替で既存社員の成長意欲が向上

-人材の採用について-
数年前までは中途採用がメインでした。欠員が出たらその都度補充するという正直、間違った採用活動をしていたのですが、3年前から新卒採用に切り替えました。新卒を採用するようになって、様々なメリットが出ています。
まず、教育面に関してですが、これまではOJTという名の現場丸投げになっていた面があるのですが、新卒採用に合わせて体系だった教育体制を敷くことができました。すると、新卒が2年目になったころに、新卒が知っていて既存社員が知らないということが出てきたのです。そして、既存社員から「私たちももっと勉強したい」という声があがり、今では月に2回、定時時間内に学習会というものを開き、私が直接、技術面や仕事に役立つ知識面の指導をしています。教育体制が整ったことに加え、社員の成長意欲が高まったことはとてもうれしいですね。

また、私自身、新卒採用をすることによって、経営ビジョンを強く意識するようになりました。毎年4月に子供が生まれるようなものですから、彼らがワクワク働ける環境を作るために、会社をどうしていくべきかということを以前より真剣に考えるようになりましたね。

社長になって初めに行ったのは給与アップ

-働き方について-
働く環境の改善にはとても力を入れています。私は3年前に社長を引き継いだのですが、環境改善として一番初めに行ったのが社員の給与アップです。社員が高いモチベーションを持って働けるように、中期経営計画に同業他社の120%の給与水準とすると明記しました。それ以降、毎年2%のベースアップを行った上で昇給もしています。
給与を上げたのは、当時の財務体質が良かったことが一因でもありますが、過去の財務体質に頼っているわけではありません。毎年、給与アップをしながらも利益も増やすことができています。社員も給与をあげてもらっているという自覚があるのでより一層頑張ってくれているのだと思います。
ちなみに、35歳の課長クラスで、一般的な平均給与より100万円くらい高い水準となっています。ですので、社員もなかなか辞めたいとはいえないのではないでしょうか(笑)。

また、残業代も確実に100%出すようにしました。以前は、正直なところ、みなし残業時間を越えた部分をなあなあにしていた感がありますが、今は1分でも越えたらしっかり残業代を払っています。ですので、定時を越えたら、「ダラダラ仕事をせずにきっちりやって早く帰れ!」ということを自信を持って言えるようになりましたね。これにより今は正社員の残業時間は月平均15時間程度になっています。残業代をしっかり払ってもお釣りがきている感じですね。

他には、評価の仕組みも変えました。社員が頑張ったことが会社にどう貢献しているのか、自分にどう返ってくるのかがわかりづらいと感じていたので、人時生産性を評価制度に取り入れました。人時生産性とは粗利益を総労働時間で割ったものですが、これを毎月公開し、人時生産性が改善すれば昇給や休みの増加につなげていくという仕組みを取っています。人時生産性を上げるには、粗利益を増やして分子を増やすか、残業時間を減らしたり有給を取得して分母を減らすしかありません。毎月毎月社内報で伝え続けているので、人時生産性の考え方は社内に徹底されてきています。

-今後について-
中期経営計画では、2027年に売上10億、社員数50名を目指しています。売上が上がっても社員は余り変化を感じないかもしれませんが、従業員が増えると変化を感じますから、社員数は増やしたいですね。そのために毎年3名ずつ新卒採用を行っていく計画です。増員すると工場が手狭になるので、5年後に新しい工場を立てることも目標にしています。
また、部品を製造する下請けとしての仕事だけでなく、最終製品の製造にも取り組みたいと思います。実は、商品名は言えないですが、過去には美容関係のヒット商品の製造に絡んでいます。様々な事情でそこから撤退したのですが、新卒が入り、新しい発想ができるようになってきたので、改めて最終製品の製造に力を入れてワクワクする仕事を増やしたいと思います。

聞き手:千葉キャリ 種村(写真右)

社名 株式会社 新栄
事業内容 1.各種OA機器・車両・インテリア・工業向け部品製造・販売
2.各種機能性材料及び両面粘接着テープの総合加工販売
 - ビク型精密プレス・抜き加工およびハーフカット
 - 各種材料の貼り合わせ・アッセンブリ
 - ラミネート・スリット加工
 - 合成樹脂加工
 - フィルム加工
 - スポンジ加工
 - ゴム加工
 - 粘着テープ(片面・両面)加工
 - 加工品の検査(寸法測定および検査成績書作成)
代表者 代表取締役 林 卓也
創業・設立 1977年2月17日
住所 千葉県船橋市藤原3-29-21
URL http://shinei-p.co.jp/
採用状況 新卒採用