エリア限定戦略でお客様とも社員とも濃いコミュニケーションを

スズキ機工株式会社 代表取締役 鈴木 豊
産業用自動機械の設計・製作とプロ仕様の工業用製品の開発を行っています。自動機械においてはオーダーメイドでの設計・製作に強みを持っている他、特に食品メーカー向けにはいくつもの特許を取得したオリジナル機械を提供しています。また、工業用製品においては、奇跡の潤滑剤「ベルハンマー」や工業用ハサミ「ベルシザー」といった多くのヒット商品を生み出しています。

移動時間1時間以内のお客様としか取引しない戦略で売上4倍に

-事業内容と会社の現状について-
当社は産業用自動機械の設計・製作と奇跡の潤滑剤「ベルハンマー」を始めとしたプロ仕様の工業用製品の開発を行っています。もともとは一斗缶(18L缶)の製造機械の修理・メンテナンスの会社としてスタートした当社ですが、バブル崩壊以降、熾烈な価格競争に追い込まれる中で長い冬の時代を経験しました。その後、食品メーカーを中心に自動機械の設計・制作分野で取引先を拡大して業態転換し、いくつもの新規事業の立ち上げに成功したことで、現在、大きな成長期に突入しています。

当社の経営戦略の大きな特徴の1つとして、装置事業においては移動時間1時間以内のお客様としか取引しないということがあります。装置事業の業務は機械を製造し、設置した後、メンテナンスなどのアフターフォローが生じます。そのため、移動時間が長ければ長いほど、時間と人件費が大きな負担となります。話せば長いのですが、過去に、お客様との接触頻度の低さから、当社が作成した図面を他社に横流しされるという痛い経験をしたことで、お客様を狭いエリアで絞り込み、濃厚な顧客対応を行うことを決断しました。この戦略により取引先は半減しましたが、売上は4倍に伸びました。

また、業績を大幅に伸ばすとともに、新規事業をいくつも生み出すきっかけとなりました。エリアを限定し、頻繁に御用聞きに行くことで、お客様の困っている事に関する幅広い情報、生の声を聞けるようになり、そんな声に向き合うことで実用性の高い新たな商品開発がいくつも実現したのです。
その代表が「がっちりマンデー!」などで取り上げられ、年間に12万本以上販売される奇跡の潤滑剤「ベルハンマー」です。摩擦が原因で顧客の機械に不具合が生じる例を山ほど見聞きする中で生まれた商品です。その他、プロ仕様の工業用ハサミ「ベルシザー」、食品工場用の掃除機ノズル「ベルスマート」などいくつものヒット商品を生み出しています。

そして、もう1つ、当社の大きな特徴は、これらの戦略や経営方針を経営計画書に明文化し、全社員に持たせて、方向性を統一していることです。経営計画書に明文化されている項目は、経営理念から行動指針、採用、人事、教育、環境整備に至るまで多岐にわたります。行動と指針を文章で理解し、それを実行に移すということを繰り返すことで強い組織を作り上げています。

コミュニケーション強化のための食事代は全額負担+残業代支給

-社員教育や組織風土づくりについて-
先ほどお話した経営計画書には、もちろん、社員教育や社内コミュニケーションに関する方針もすべて明記されています。例えば、教育に関しては「学ぶ姿勢を訓練するために朝礼を大事にする」とか「基本は現場にあるという考え方から過剰でも良いから現場に行く」といった基本方針を示した上で、具体的なプログラムを作っています。能力アップに役立つと思われる資格などは推奨資格として取得のための全面サポートをしていますし、社外の有益なセミナーや研修にも会社負担で積極的に参加しています。
また、社内コミュニケーションに関しては、社員がお互いにリスペクトできる環境を作ることを目的に、社内での呼び名を「さん」づけに統一したり、定期的な食事会を開いたりしています。
食事会に関しては、全額会社負担なのはもちろん、勤務時間外にあたる部分に関しては残業代を支給し、強制参加にしています。そこまでやるかと思われるかもしれませんが(笑)、違う部署や業務で直接接しない人との積極的なコミュニケーションを取る場として活用してもらい、社内の風通しのよさにつながっています。

これらの細かいルールや仕組みはあるのですが、何よりこの経営計画書に基づいて経営を行うこと自体が、社員の教育、風土づくりに一番影響を及ぼしていると思います。会社がどういう方向に進もうとしているのか、なぜそれをやろうとしているのか、といったことを全員が理解して、その上で、業務に取り組む。これが一番の人材教育になっていますね。

就業規則は社員説明会を開き、社員に徹底的に説明

-働き方について-
残業時間や残業代、生産性など、社員の働き方に関してはかなり気を使って会社経営を行っています。ここまで徹底しているのは珍しいと言われるのですが、例えば、就業規則は毎年更新し、社員向けの説明会を行って全社員にしっかりと説明しています。
労働環境の整備に関しては、会社が法令を遵守しているということだけではダメだと思います。法令を遵守するためにこういうルールで運用するんだということを説明し、社員にもしっかりと理解させることが大切ですね。労働紛争などが起きたら、会社だけでなく社員も困ってしまいます。会社も社員もお互いが困らないようにするために、働く環境づくりには徹底的に気を使っていくべきだと考えています。

-人材の採用について-
これまでは中途採用を中心に行ってきましたが、今年度から新卒採用に特化しています。真っ白な状態で当社のDNAを入れて育てることが強い組織づくりに有効だと考え、毎年3人ずつ5年間採用することを計画しています。
今年は、初めてインターンシップにもチャレンジしました。採用に直結するというより企業活動そのものを社会の利に還元するという意図が強いですが、プログラムは社会勉強の機会提供としてかなり優れていると自負しています。
新商品の企画立案から設計、加工、商品名や価格の決定、プロデュース、ネットショップへの出店、商品購入という当社のビジネスにおける一連の流れをすべて学生に体験してもらいました。ビジネスの川上から川下まで実体験できるプログラムとしてとても面白いのではないでしょうか。多くの学生に参加してもらい、社会勉強をすると共に、ビジネスの面白さを感じてもらえればと思います。

-今後について-
当社は、本業だった一斗缶の製造装置の製作に関する売上が10年前にゼロになり、産業が突然死するという体験をしました。事業が衰退するのではなく、なくなってしまうという体験は衝撃的でした。ですから、今はベルハンマーが好調に売れ、海外展開まで含めてとても順調に成長していますが、いつか突然売れなくなるかもしれないという危機感は持っていないといけません。
どんな状況に陥っても会社を永続的に存在させる、社員を守るためには、変化に強い人材、組織を作っていく必要があります。そのために、常にお客様の声に敏感になり、新しい商品開発にアンテナを張り続けるという企業文化を大事にしたいと考えています。ビジネスモデル報告と言う形で毎月、企画会議を行っていますが、社員から「ベルハンマー」に次ぐヒット商品のアイディア、企画が上がってくる。そんな環境を作りたいですね。

社名 スズキ機工株式会社
事業内容 1.オーダーメイド産業用自動機械の設計・制作
2.CCDカメラ検査装置の設計・製作
3.ハイブリッド式自動粉掛け装置HS-101 の製造・販売
4.極圧潤滑剤LSベルハンマーの製造・販売
5.食品機械用潤滑剤H1ベルハンマーの製造・販売
6.パケットリールの製造・販売
7.独立型振動ふるいNS-450 の製造・販売
8.土井式ライニングマシン部品の製造・販売
9.プロ仕様工業用ハサミ「ベルシザー」の製造・販売
代表者 代表取締役 鈴木 豊
創業・設立 1976年7月
住所 千葉県松戸市松飛台316-3
URL http://www.suzuki-kikoh.com/
採用状況 新卒採用