組織づくりに関しては、人事評価と経営者の姿勢が大事

秋田建設工業株式会社 代表取締役 安保 雅彦
主に災害や地震に強いツーバイフォー工法を施した住宅建設を手掛けています。木造の注文住宅・建売住宅の他、アパート、倉庫、老人ホームの建設、事務所やオフィスのリノベーションなど、多種多様な建設に関わる総合建設会社です。

会社の売上=社員のレベル

-事業内容と会社の現状について-
今年で創業50周年を迎える当社は、社名の由来でもあるのですが、先代が秋田県で職人としてスタートした会社です。縁あって千葉県に移住し、造園業やコンクリート施工を経て、ハウスメーカーの下請として戸建注文住宅の施工に携わります。その時の施工法がツーバイフォー工法で、それが当社の強みとなりました。今でこそ年間10万棟を超える住宅の施工に使われているツーバイフォー工法ですが、当時(1970年代前半)は国内でほとんど流通していなく、日本における走りだったと言えます。

ツーバイフォー工法は在来工法よりも簡単ではあるのですが、国内における前例がほとんどないため、日本の風土に合った形、ルールにあった形で展開するのが難しく、そこに苦慮しました。ですが、材料を輸入するのも安かったですし、アパートや建売で需要がどんどん増えました。在来工法においては過当競争となっていましたが、特殊な建築ということで差別化できたため、収益性がよく、会社の強い基盤づくりにつながったのです。

その後、順調に業績を伸ばしてきたわけですが、私は、会社の売上=社員の技術レベルだと考えています。昔こそ大工工事しか請け負えないという時期もありましたが、今では、建売住宅から注文住宅、アパート、倉庫、老人ホーム、ホテルの建設、またビルの改修やマンションの大規模修繕まで請け負うことができています。それだけ技術者のレベルが上がってきたということです。
例えば、木造住宅といっても地下まで作れる建設会社はそれほど多くはありません。木造だけでなくRCの知識や技術が必要ですから。頂いた仕事を断らないという方針で仕事の幅を広げてきたことで、スタッフは大変だけど、スキルがあがり、それがイコール、業績向上につながってきたのです。

また、能力のある人材というのはずっと同じレベルの仕事では満足しません。入社してずっと建売の施工では面白くないわけで、どんどん新しいことにチャレンジしたいものです。特殊な建築を請け負えるというのは社員の技術への好奇心も満たせるのだと考えています。今年の4月に八街に建てたホテルでは、今温泉を作っていますよ。これも初挑戦ですが、3人のスタッフが関わり4月オープン予定です。

離職の境目は2年。2年以上いる社員はほとんど辞めない

-人材採用について-
実は人材採用に関しては、高卒の新卒採用に取り組む程度で、これまでほとんど公募で募集をかけたことがありませんでした。
先代から引き継いでいる経営哲学なのですが、当社では「ものを買うときはお金を借りて買うのではなく、ある程度貯金して自分のお金で買うべきだ」という考えを持っています。話はそれますが、この考えから、内部留保や自己資本比率に強い意識を持って経営をしてきています。だから当社にはバブル後にも不良債権はなく、今も財務体質が非常に強い会社となっています。

採用についてもこれと同じ考え方をしているのです。つまり、売上目標に合わせてどんどん外部から人を採用するという考え方をしていないのです。人を入れれば会社の業績がもっと伸びるのにと言われることもありますが、全く逆で、社員がこれだけ成長して、さらに新たな人材が入ったから、仕事を増やしていこうという考え方をしているのです。ですから、今も採用活動は焦らずじっくり行っています。
今の時代において売上が横ばいでも立派。経営者とは売上を伸ばすだけが能力ではないと思います。当社では、急激な売上の伸びはしていませんが、着実に技術力があがり、高い収益を継続して出せる環境を作れています。

そんな採用において私が一番重視しているのは「ミスマッチ」を起こさないこと。当社の考え方や風土、現場での関わり方などが受け入れられるかどうかがとても大事だと考えています。そういう点で、まっさらな状態で入社してくる新卒は当社になじませやすいですね。
未経験者の採用であれば、日給は払いますが何もしなくていいと伝えます。2週間現場にかじりつき、実際の現場を見て、現場監督や職人と話した上でやれるかどうか判断してもらう。そんな関わり方をしてきました。
今でも現場重視の考え方ですので、最初に私が面接して良いと思った人材に関して、部長や現場の担当者に立ち会ってもらって、最終的に彼らに採用を決めさせるようにしています。

人事評価は10年以上に渡り試行錯誤で変え続けてきました

-人材の育成や組織づくりについて-
正直に言っていいものかわかりませんが(笑)、社員教育に関してはほとんどやったことがありません。もちろん新卒に関してはマナーなどの新入社員研修は行いますが、それ以外はほとんどありません。基本的に現場で実地で学んでもらいます。工法や品質管理に関しては教科書がありますが、施工管理に一番求められる工程管理は教えられるものではないですから。
契約工期の中で、どの基礎屋を使うのか、どの大工を使うのか、品質やスピードを考慮してこの選択をしていくのはある意味センスです。極端な話、教えてわかるものではありません。なので、現場で学ぶ。それに尽きると考えています。

そんな当社ですが、技術者のレベルが高いことが自慢です。家一軒立てるのに何万パーツとあるわけですが、建材は商社に外注するといった会社もある中、当社は自社施工が基本です。だから担当者は大変。すべての建材を拾わないといけないわけですから。
でも、だからこそ知識や技術レベルが高まるのです。言い方はなんですが、どこの建設会社にいっても間違いなく通用するんじゃないでしょうか。

組織づくりにおいて大事なのは人事評価と経営者だと考えています。人事評価をしっかりし、経営の成果を還元することを意識しています。毎月の給与は正直他社と比べて高いわけではないと思いますが、賞与は経営の結果に応じて存分に出しています。もちろん社員の評価によって差がありますが、全体として賞与は社員の期待を満たせているのではないでしょうか。

評価方法に関しては正直、非常に難しいです。同じ建物を立てるのであればそれぞれの評価は簡単ですが、全く違う建築に携わり、工期や金額も違う中での評価は大変です。
給与体系、人事評価ともに10年以上に渡り試行錯誤で変え続けてきました。今では、会社からの期待への貢献度、実績、自己評価を組み合わせて、それなりに満足できる評価制度が出来ています。

また、経営者の姿勢も組織づくりにおいてはとても重要だと考えています。特に社員や経営への関わり方がポイントです。
中でも私が気をつけているのが、怒らないということ。経営者が怒鳴っている会社においては、部下も取引先に怒鳴ったりすることが往々にしてあります。私は、基本的に、自責で物事を捉えるようにして、一切感情的な怒り方をしないようにしています。怒ったって人間は変わりませんから。
怒らず逆に社員が伸び伸びやれるように気を配っています。細かいことをわざわざ指摘せず、裁量権を与えてなるべく自由に。細かい仕事を与えて仕事を増やすのではなく仕事を減らすことが私の役割だと捉えています。

そして、もう1つ気をつけているのが、経営に真摯に向き合う姿勢を見せることです。私の出社時間は6時半です。遠い現場を担当することになって早く出社する社員がいてもすでに事務所に社長がいる。自分だけがという不満感は減りますし、逆に安心感を抱いてくれています。だから私はそこはずっと徹底しています。
楽しいゴルフも出来るだけ社員に行かせて楽しんできてもらうようにして、私は真面目に朝早く出社するのです(笑)

社員の雇用を絶対に守るのが私の使命

-今後について-
経営哲学の話をしましたが、どちらかというと石橋を叩いて渡る。なんでも質素にするという考え方を持っています。立派に伸ばし続けている会社ももちろんありますが、急成長しても転んでしまう会社もあります。うまく行っているときはいいけど、一度転んでしまうと大変です。だから当社は慎重に進んでいくという選択をします。

他の建設会社にない技術を持っていたら全国展開できるわけで、当社には正直そんな技術はありません。だから、社員のレベルを着実に上げ、コツコツと仕事を積み上げていきます。結果、ほとんど営業をせずともリピートや紹介で仕事が増える状況です。ですから、広告宣伝は必要ないし、展示場もないので安く提供できる。ここが当社の強みでもあります。

この先も売上をどんどん伸ばしていこうという考えはありません。それよりも私の意識の中では危機感の方が大きいですね。オリンピックが終わると景気が落ちることが十分考えられます。その時に、社員の雇用を絶対守れることが私の使命。仕事の幅を広げること、安定収入となる資産を増やすことで、財務体制の強い絶対に潰れない会社にすることが経営者の役割だと考えています。

聞き手:千葉キャリ 種村(写真左)

社名 秋田建設工業株式会社
事業内容 木造建設業:枠組ツーバイフォー工法、耐火木造ツーバイフォー工法、軸組在来工法、鉄骨造建設
リフォーム工事業:【戸建】 リフォーム、リノベーション【マンション】 リフォーム、リノベーション
開発工事業:宅地造成
賃貸業:アパート・マンションなどの企画、建築請負、社有賃貸管理
代表者 代表取締役 安保 雅彦
創業・設立 1968年5月
住所 千葉県千葉市稲毛区山王町135
URL http://akkco.co.jp/
採用状況 中途採用

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